Prerequisite
この節では電磁場中の荷電粒子の系の運動量と力積の関係を調べる.
外力のはたらかない質点は慣性の法則にしたがい,ゆえに運動量は保存する.
外力がある場合には力積によって運動量は変化する.
電磁場中の荷電粒子の運動方程式は
質点の運動量を とおくと
となる.
右辺を電荷密度 と電流密度 で書き換えるためにデルタ函数をはさんで
電荷密度を ,電流密度を で定義すれば,
となる.
右辺が電磁場から受ける力,ないしは単位時間あたりの力積である.
この項がMaxwell方程式上でどのように表されるかを見ていこう.
まず右辺第1項はGaussの法則 により
ここで は真空の誘電率.
次に右辺第2項はAmpère–Maxwellの法則 より
ここで は真空の透磁率.
を計算すると,
となる.
ここで はPoyntingベクトルで,2行目へはFaradayの法則を用いた.
以上から,
2行目の の項は電場と対称になるように追加した項で単磁極の非存在 より に等しい.
ベクトル に対して
となる.
微分演算子は1つ目の にのみ作用していることに注意せよ.
ここでEinsteinの縮約規則を適用し同じ添字は和をとっているものとし は微分演算子 の 成分である.
したがって,
と変形できる.
電場と磁場について同様の式変形から,
とできる.
ここで
Maxwellの応力テンソル
とおいた.
これをMaxwellの応力テンソル (Maxwell stress tensor) という.
式から明らかなように応力テンソルは対称である; .
左辺は電磁場が荷電粒子に及ぼす単位時間あたり,単位体積あたりの力積と解釈すると を電磁場の運動量密度, を運動量密度の 成分の流れの 成分を表す運動量流密度とみなせる.
つまり荷電粒子がないところでは運動量についての連続の式
が成立する.
電磁場は空間の各点に運動量を持っていて,その近傍の点とやりとりをしている.
しかし荷電粒子がある点 においては運動量の授受が荷電粒子とも発生し,電磁場の運動量が消滅・生成するために連続の式は満たされない.
の項は運動量の生成密度である.
領域 上で積分してGaussの定理を適用すれば
荷電粒子の運動量の式と合わせれば
この式からは,荷電粒子を含む領域 内の粒子の運動量と電磁場の運動量の総和は勝手に湧き出したり消滅したりせず,領域 の流出入の合計とバランスすることがわかる.
さらに を全空間に替えて,さらに無限遠ではエネルギーの流れはないとすると
が成り立つ.
つまり荷電粒子と電磁場の運動量の総和は保存する.
ここまでは荷電粒子1つの場合を考えた.
一般に質量密度 をもつ物体の場合には,運動量が各点で
である.
このとき空間の各点で全運動量密度 に対して
が成立する.