正準形式

Introduction

この章では正準形式の解析力学を紹介する.
正準形式ではHamiltonianと呼ばれるスカラー函数が基本となる.
正準形式は数学的な解析のしやすから微分方程式論,可積分系,シンプレクティック多様体といった広がりを持つ.
また統計力学の計算や量子力学への移行手続きでは正準形式が有効である.

正準方程式正準形式の作用では正準形式の基本原理について述べる[1,2].

Poisson括弧では正準形式や量子力学で重要な量であるPoisson括弧を導入する[1,2,4].

時間依存しない正準変換正準変換の母函数微小正準変換では正準変換とよばれる変換について考える[1,2,3,5,7].
また正準変換と対称性やPoisson括弧との関連性についても議論する.

位相空間では正準形式の基本変数がなす空間とその幾何学的構造について簡単に述べる[3].
位相空間は統計力学において再登場する.

Hamilton–Jacobiの理論では正準変換を用いた運動方程式の解法の1つについて述べる[1,4].
また正準形式の摂動論では正準変換を利用した近似理論について述べる[4,7].

Maupertuisの原理では幾何光学とのアナロジーについて述べる[2,3].
ここでの計算と同様のものが一般相対性理論でも現れる.

断熱不変量では外部パラメータがゆっくり変化する場合の不変量について述べた[2,3].
断熱変化については量子力学の章で再考する.

Grassmann変数の解析力学では反可換な変数のHamiltonianについて考える[6].
Grassmann変数に対応する物理系は存在しないが,場の量子論でFermi粒子の場を導入する場合に必要となる.

Reference

Lagrange形式と重複するが解析力学のよい入門書として

[1] 畑 浩之,『基幹講座 物理学 解析力学 (基幹講座物理学)』,(東京図書,2014). >>> Amazon
[2] L. D. ランダウ, E. M. リフシッツ, 『力学』,(東京図書, 1986). >>> Amazon

[2]は正準形式の章が難解だがコンパクトに要点がまとまっている.

[3] 山本義隆,中村孔一,『解析力学1 (朝倉物理学大系)』,(朝倉書店,1998). >>> Amazon
[4] 山本 義隆,中村 孔一,『解析力学2 (朝倉物理学大系)』,(朝倉書店,1998). >>> Amazon

は正準形式のさまざまな側面が書かれており動機づけに良い.
特に摂動論や可積分系など他書であまり触れらない内容も詳しい.

他に以下を参考にした:

[5] G.F. Torres del Castillo, “The generating function of a canonical transformation“, Revista Mexicana de F´ısica E 57 158–163.
[6] M. Srednicki, “Quantum Field Theory”, (Cambridge University Press, 2007). >>> Amazon
[7] 吉田 春夫,『天体力学と摂動論 数理科学 2016年 09月号』,(サイエンス社,2016).>>> Amazon
[8] 菅野 礼司,『ゲージ理論の解析力学』,(吉岡書店,2007). >>> Amazon