運動の法則

Introduction

この章ではNewtonの運動方程式を出発点にその解から種々の現象を説明する.
また各種運動方程式の解法について説明する[5].
また運動方程式を解く上でも,また物理学全体の基本原理として重要な保存則についても述べる.

運動の法則の節ではNewtonの運動の法則を提示する.
特に質量をもった質点の軌道を求めるための方程式を与える.
ここでは力の例として垂直抗力,ひもの張力を挙げている.
以降の数節で力と運動方程式の具体例を見ていく.

Galileiの相対性原理の節では,力がはたらかない場合の運動方程式を考察する.
また慣性系を導入し,複数の慣性系間の変換則,Galilei変換を与える.
これらの概念は(Galileiの)相対性理論として重要な意味を持つ.

一様重力場の節では力が定数の例として重力を考える.
運動方程式が簡単に解けることから最初の例として適当である.
摩擦力空気抵抗の節では身近な力の例として摩擦,空気抵抗がある場合の運動を取り上げる[1, 2].
この2つの力はエネルギーが保存しない力の例として重要である.

等速円運動の節では軌道からそれを実現するための力の条件を定める.

非慣性系の節では慣性系ではない観測者から見た運動について議論する.
ただし一般論は扱わず非慣性系のうち座標の回転を伴わないものを考える.

対称性の節では現代物理学でとても重要な系,または運動方程式の対称性について触れる.
対称性のより深い議論は解析力学や量子力学の章で議論することになるが,その布石としてNewtonの運動方程式のもつ対称性を見ておく.

エネルギー保存則線積分エネルギーの原理と保存力の節では物理学全体において重要な概念であるエネルギーを扱う.
線積分は単なる数学的道具であるが,ポテンシャルの存在条件はエネルギーの保存力条件だけでなく,解析力学の母函数,熱力学の熱力学変数などで重要である[4].

運動量保存則の節ではエネルギーの次に重要な保存量である運動量を導入する.

単振り子の節ではエネルギー保存則を用いた運動方程式の解法の例として振り子運動を扱う.
振り子は振動現象の例としても重要である.

二体系の運動方程式の節では2質点の系の運動方程式の解放を議論する.
2質点の系は相互作用する系の最も簡単な例としてたびたび登場する.

弾性衝突の節では二体系の運動方程式と運動量保存則を用いた解法が適用できる例として2質点の衝突問題を取り上げる[3].
より一般の問題は散乱問題として電磁気学,量子力学,素粒子論で重要である.

撃力の節では力積の直感的理解のために撃力のもとでの運動を議論する.

単位と次元の節では種々の物理量の単位について触れる.
次元は微分方程式を解く上でも重要である.

Reference

以下を参考にした:

[1] 松川宏,摩擦の物理,(岩波書店,2012) >>> Amazon
[2] L. D. Landau and E. M. Lifshitz, Fluid Mechanics, (Butterworth-Heinemann, 1987). >>> Amazon
[3] V. D. バージャー,M. G. オルソン,『力学―新しい視点にたって』,(培風館,1992)>>> Amazon

線積分やポテンシャルの存在条件については

[4] 杉浦光夫,解析入門 Ⅱ,(東京大学出版会,1985).>>> Amazon

微分方程式の解法については

[5] 寺沢 寛一, 自然科学者のための数学概論,(岩波書店,1983).>>> Amazon