相対論的量子力学

この章では特殊相対性理論と量子力学の統一を試みる.
しかしこれは最終的にうまくはいかない.
この章は次の場の量子論へのモチベーションを与えることを目的としていて,急ぐ読者はこの章自体をスキップできる.

Klein–Gordon方程式では最も素朴なやり方で相対論的な波動方程式を導出する[4,5].
またその一般解を求める.

Klein–Gordon方程式の困難ではこの波動方程式が量子論的に破綻していることを確認する[1].

Dirac方程式ではDirac理論に基づいて線型性を尊重して相対論的な波動方程式を導出する[1,2].

Diracのガンマ行列ではDirac方程式に現れるガンマ行列の性質について簡単に調べていく[3,4,5].
より詳細には場の量子論の章で議論する.

Dirac方程式のLorentz共変性ではDirac方程式に現れる各量のLorentz変換性を調べる[1,3,4,5].
ただしここではDiracスピノルを場ではなくあくまで波動函数として扱うことに注意せよ.

Dirac方程式の一般解ではDirac方程式の解いて平面波の重ね合わせで表す[1,4].

相対論的量子力学のU(1)ゲージ理論ではゲージ原理に基づいてKlein–Gordon方程式,Dirac方程式に電磁場を導入する[2,4].またカイラルゲージ理論について簡単に触れる[4,5].

Dirac方程式の非相対論的極限ではDirac方程式から非相対論的Hamiltonianを正準量子化して得られるSchrödinger方程式を導出する[1,7].
また電磁場があるときにはスピンと磁場の相互作用項が導かれることも見る.

相対論的量子力学の困難では主にDirac方程式で波動函数による確率解釈が破綻することを見る[1].
さらにDiarcの空孔理論について触れて,もはや1粒子の理論ではないことを確かめる.

相対論的Landau準位では一様静磁場中のDirac方程式での量子化されたエネルギー準位を求める[1].
さらにLandau準位のDiracの海においてはカイラルカレントにアノマリが生じることを概略的に解説する[5,6].

相対論的量子力学については

[1] 西島和彦,『相対論的量子力学 (新物理学シリーズ 13)』,(培風館,1973). >>> Amazon

が詳しい.
ただし表記が現代的ではない.

他に以下を参考にした

[2] P. A. M. ディラック, 『量子力学 原書第4版』,(岩波書店,1968).>>> Amazon
[3] 久後汰一郎,『ゲージ場の量子論 I』, (培風館, 1989). >>> Amazon
[4] M. Srednicki, “Quantum Field Theory”, (Cambridge University Press, 2007). >>> Amazon
[5] M. E. Peskin and D. V. Schroeder, “An Introduction To Quantum Field Theory” (Westview Press, 1995). >>> Amazon
[6] 野村健太郎,『トポロジカル絶縁体・超伝導体(現代理論物理学シリーズ 6)』,(丸善出版,2016). >>> Amazon
[7] 猪木慶次,川合光,『量子力学II』,(講談社,1994).>>> Amazon