振動論

Introduction

この章では振動現象を中心に議論する.
振動を記述するのは周期函数で,主に三角函数を用いる.

振動現象が現れるのは運動方程式が線型な場合である.
線型微分方程式では線型代数学やFourier変換といった数学が大いに役に立つ.

物理学の中で振動現象は非常に重要な役割を果たしており,電磁気学の波動方程式,量子力学のSchrödinger方程式,一般相対性理論における重力波,固体物理や量子統計における素励起,場の量子論のスペクトル分解などに登場する.

単振動の節ではいわゆるHookeの法則を扱い,振動論の最も基本となる振動解を与える.

減衰振動の節では抵抗力がある中での振動を議論する.

振動の二体問題では振動論における2つの典型的な二体問題を扱う.

行列行列式実対称行列の固有値問題では線型代数学のうち行列に関する道具立てを行う[2].
特に実対称行列(と複素に拡張したHermite行列)に関しては振動論以外にも至る所に登場し,それ以外の行列は稀である.
そのためここでは実対称行列に限定し,他の例や一般論については割愛した.

振動のモード; 二体系振動のモード; 多体系振動のモード; 周期的境界条件では線型代数学の知識を使って微分方程式を解いていく.
多体系の例は連続体や固体物理において重要な意味を持つ.
またモードに分解する考え方は固体物理,電磁気学や場の量子論においても登場する.

強制振動共鳴現象では減衰振動の問題に外力の項を付け加えたものを議論する[1].
この問題は非斉次の微分方程式の解法としても重要である[3,4,5].
共鳴現象は量子力学の散乱問題でも登場する.

Reference

振動論についてよくまとまっているものは

[1] L. D. ランダウ, E. M. リフシッツ,『力学』,(東京図書, 1986).>>> Amazon

線型代数学については

[2] 佐武一郎,『線型代数学』,(裳華房,1958).>>> Amazon

複素積分については

[3] 杉浦光夫,『解析入門 Ⅱ』,(東京大学出版会,1985).>>> Amazon
[4] 神保道夫,『複素関数入門』,(岩波書店,2003).>>> Amazon

複素積分やFourier変換,微分方程式の解法を網羅的に扱った数学書としては

[5] 寺沢 寛一,自然科学者のための数学概論,(岩波書店,1983).>>> Amazon

がある.