真空中のMaxwell方程式

Introduction

この章では前章で議論したMaxwell方程式を真空中において議論する.
またこの章では基本的に相対論的に共変な形で議論を進めることにする.

真空中のMaxwell方程式では前章の内容を改めてまとめておく.

ゲージ対称性ではMaxwell方程式に特有な対称性について紹介する[1,3].
ゲージ対称性の考え方は量子論や物性理論,素粒子論,一般相対性理論において基本的な原理の1つとなっている.

静電場のGreen函数では静電場のPoisson方程式をGreen函数の方法を用いて解を構成する[2,4,5].
静電場の多重極展開ではこの解を遠方で観測するという条件のもとで近似する[1,6].

静磁場の方程式では静電場と同様にして解を構成し,多重極展開を行う[1,2].
また立体角との関係についても述べる[2].

電磁波電磁波の性質では全く物質が存在しない空間におけるMaxwell方程式の解,すなわち電磁波について議論する[1,2,3].

電磁場のGreen函数荷電粒子のつくる電磁場では一般のMaxwell方程式をGreen函数の手法を用いて解き,荷電粒子が1つだけ存在する系に適用する[1,2].
この解はLiénard–Wiechertポテンシャルとして知られる.

荷電粒子による輻射制動輻射ではLiénard–Wiechertポテンシャルから導かれる輻射場について議論する[1, 2, 7].
電磁波の輻射は電波天文学や対象となる中性子星や銀河などの天体物理学,また素粒子の加速器実験にも応用される.

輻射減衰では輻射によるエネルギーの散逸に対応して粒子の運動方程式に減衰項が現れることを見る[1, 7].

多重極輻射では荷電粒子の輻射を電荷が局在した系に拡張する[1, 7].
議論の進め方は輻射の理論と多重極展開の両方の理論を併用した形になる.

電磁場の散乱理論では輻射の議論を押し拡げて散乱問題を取り扱う[1,2].

電磁気学の困難ではここまで議論した電磁場の理論がミクロな世界では破綻することを見ていく[1,2].

Reference

ここでは以下を参考にした:

[1] L. D. ランダウ, E. M. リフシッツ, 『場の古典論』, (東京図書, 1978). >>> Amazon
[2] F. Melia, “Electrodynamics”, (University of Chicago Press, 2001). >>> Amazon
[3] M. Srednicki, “Quantum Field Theory”, (Cambridge University Press, 2007). >>> Amazon
[4] 太田浩一,『電磁気学の基礎I』,(東京大学出版会,2012).>>> Amazon
[5] 今村勤,『物理とグリーン関数』,(岩波書店,2016).>>> Amazon
[6] 森口繁一,一松信,宇田川銈久,『特殊函数 (岩波 数学公式 3)』,(岩波書店,1987).>>> Amazon
[7] 太田浩一,『電磁気学の基礎II』,(東京大学出版会,2012).>>> Amazon