力学の基礎

Introduction

全ての最初のこの章では物理学の最も基礎となる用語の定義とベクトルと微積分の導入をする.

自由度の節では物理学の対象で前提となる数,自由度を導入する.
座標の節では自然現象を定量化するための道具である座標軸を導入する.
自由度と座標はあらゆる物理学において用いる概念であり力学に限定されない.

位置ベクトルの節では初等的なベクトルという概念を導入する.
位置ベクトルは厳密には矢印のことであるが数学的構造はベクトルと等価である.
加えて内積と外積を定義する[2].
力学の章では基本的に3次元で議論し一般次元では考えない方針をとる.

スカラー三重積・ベクトル三重積の節ではベクトルに関しての便利な公式や記法を導入する.
これらは力学の初歩としては尚早な観があるが,これを使える方が計算が楽になることが多いのでここでの位置づけとした.

速さ極限微分速度ベクトルの4節では力学の発展で最重要な概念である微分を中心とした議論となる.
極限,微分の節では数学の節として独立しているので,既知の読者は読み飛ばしてもよい.
本サイトは物理が主体なので証明は主張の理解に焦点を当て,数学的な妥当性は数学書に委ねることとした[1].
これは他の数学の節にも当てはまる.

微分と極限の節では極限や微分を使って函数のふるまいを調べる方法について紹介する.
これは後で運動方程式の解を評価する際に役に立つ.
力学ではあまり登場しないが統計力学,量子力学,量子統計力学などで役に立つ.

積分定積分の節では積分計算を導入する.
力学の目的はいかに運動方程式を積分するかと言うことに尽きる.
また積分定数は物理学ではしばしば重要な意味を持っており,エネルギー保存則,運動量保存則といった名前が付けられることがある.

加速度の節では運動方程式で重要となる加速度の概念を導入する.

Taylorの定理の節では物理学のあらゆる場面で用いるTaylor展開を導入する.
Taylor展開が最も威力を発揮するのは摂動論である.
摂動論は解析力学,量子力学,場の理論の章でそれぞれ議論する.

多変数函数の微積分の節では微分・積分の対象を多変数の函数へ拡張する.
ただし積分については2次元,3次元への拡張が微分と異なり幾何学的な難しさがあるので別の章で段階を踏んで拡張していく.
特に電磁気学,熱力学の章からは多変数の微積分が重要となる.

この章で導入する微分積分学とベクトル代数学(線型代数学)は物理学のあらゆる分野で登場し物理学を学ぶ上で必須の道具となる.

Reference

[1] 杉浦光夫,『解析入門 Ⅰ』,(東京大学出版会,1980).>>>Amazon
[2] 佐武一郎,『線型代数学』,(裳華房,1958).>>>Amazon

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