特殊相対性理論

Introduction

この章ではEinsteinの特殊相対性理論を説明する.
特殊相対性理論自体はそれほど難しいものではないが数節にわたって解説する.
そのあとで一般相対性理論や場の量子論への準備として数節を置いた.

Einsteinの相対性原理四元ベクトルでは特殊相対性理論の導入のあと光速不変の原理に基づいた数学的道具を紹介する[1].

Lorentz変換では特殊相対性理論における慣性系間の変換則を導出する[2].
多くの入門書では光速不変の原理を基本原理とするが,結局最も重要なのはLorentz対称性である.
どんな場の量子論もLorentz変換に対する対称性を必ず持っており,作用を定める指導原理の1つとなっている.

因果律と同時の概念時間の遅れとLorentz収縮では特殊相対性理論とNewton力学のちがいを解説する.
特に時間の相対性について詳述している.

相対論的力学相対論的粒子のLagrangianでは特殊相対性理論での力学的物理量について述べる.
なかでも有名なEinsteinの関係式を導く.
ここで扱うLagrangianは電磁気学で再度議論する.

相対論的な二体系の運動方程式では二粒子の系の運動方程式について議論する[2,9].
基本的にはNewton方程式と同様の手法が使えることをみる.
また弾性衝突を重心系と実験室系で記述する.

相対論的な散乱理論では散乱理論をLorentz共変な形に拡張する[2,5].
相対論的な微分断面積は素粒子物理学においては基本的な物理量である.

四元ベクトルの双対性では四元ベクトルの数学的構造について一般相対性理論などを見据えて議論する[3, 4].

Lorentz群Lorentz変換のLie代数ではLorentz変換の数学的構造について場の量子論など見据えて議論する[5, 6].

二次形式の相対論的作用では弦理論で使われるトリックを紹介する[7, 8].
ここでは点粒子を扱うがひもや膜などの高次元の対象にも拡張できる.

Reference

力学のみの特殊相対性理論の入門書としては
[1] B. シュッツ, 『相対論入門 I 特殊相対論』, (丸善, 2010). >>> Amazon

電磁気学と合わせた入門書として優れているのは
[2] L. D. ランダウ, E. M. リフシッツ, 『場の古典論』, (東京図書, 1978). >>> Amazon

四元ベクトルの数学的構造や抽象添え字については
[3] 白水徹也, 『アインシュタイン方程式 〜一般相対性理論のよりよい理解のために〜』, (サイエンス社, 2012). >>> Amazon
[4] R. M. Wald, “General Relativity”, (The University of Chicago Press, 1984). >>> Amazon

Lorentz群については
[5] 久後汰一郎,『ゲージ場の量子論 I』, (培風館, 1989). >>> Amazon
[6] M. Srednicki, “Quantum Field Theory”, (Cambridge University Press, 2007). >>> Amazon

他に以下を参考にした
[7] 福間将文,酒谷雄峰,『重力とエントロピー 〜重力の熱力学的性質を理解するために〜』, (サイエンス社, 2014). >>> Amazon
[8] J. ポルチンスキー,『ストリング理論 第1巻』, (丸善,2012). >>> Amazon
[9] ゴールドスタイン, ポール, サーフコ,『古典力学(上)』,(吉岡書店,2006)>>> Amazon