量子論の基礎

Introduction

この章では量子論を導入する.
原子や分子サイズのミクロな物体を対象にした物理学で20世紀初頭から始まった比較的新しい分野である.
相対論のときと同じくこれまでの物理学を一度忘れて新たに物理学の理論を構築していくことになる.

量子論の導入ではまず量子論とは何かということに1節を割いて始める.
量子論確立までの歴史的経緯などは他書に委ねる.

状態ベクトルオブザーバブルでは量子論に必要な数学的な道具立てを行う[1,2,3].
線型代数学の基本的な事項を前提とする.

固有状態ベクトルオブザーバブルの固有値分解ユニタリ変換ではさらに線型代数学の諸定理を適用していく[1,2].
数学的な詳細は線型代数学の教科書に委ねる.

Bornの確率規則不確定性原理ではさらに確率論を導入する[1,2,5].

状態ベクトルの時間発展では量子論における基礎方程式であるSchrödinger方程式を紹介する[1,2].
また射影仮説についても触れる[1,2,5,6].

量子論の基本原理ではここまでの数節の内容を簡単にまとめ,連続スペクトルの場合にも簡単に拡張する[1,3].

Baker–Campbell–Hausdorffの公式では量子論でたびたび登場する演算子の指数函数に関する公式を紹介する.

Heisenberg描像では期待値の計算や時間発展に関してもう1つの見方を紹介する[4].

Reference

量子論の枠組みを丁寧に解説している入門書として

[1] 清水明,『量子論の基礎―その本質のやさしい理解のために』,(サイエンス社,2004).>>> Amazon
[2] 北野正雄,『量子力学の基礎』,(共立出版,2010).>>> Amazon

がある.
[1]は基礎事項に重点が置かれ,[2]は数学的事項に重点が置かれている.

また古典的な名著として

[3] P. A. M. ディラック, 『量子力学 原書第4版』,(岩波書店,1968).>>> Amazon

がある.
内容は古く(特に量子情報,場の理論についてはまだ未発展の頃のため),解読が難しいが必要なことは書かれている.

他に以下を参考にした

[4] 猪木慶次,川合光,『量子力学I』,(講談社,1994). >>> Amazon
[5] 堀田昌寛,『入門 現代の量子力学 量子情報・量子測定を中心として』,(講談社,2021). >>> Amazon
[6] 沙川貴大,上田正仁,『量子測定と量子制御』,(サイエンス社,2016). >>> Amazon