熱力学の基礎

Introduction

この章では熱力学の導入を行う.
熱力学系の記述に必要な各種物理量を定義し,それらの関係について議論していく.
現代において熱力学の構成にはさまざまあるがここでは最も慣習的な順序で構成していく.
現代的な,もっと公理的な熱力学の構成については章を改めて論じることにする.

熱平衡状態の節では熱力学の対象となる系や用語を説明する.

熱力学第一法則熱力学第二法則では熱力学における基本法則を紹介する.
ここでは力学の流れから自然に理解できるような導入の仕方にしている.

理想気体の熱力学では熱力学を理解する上での例として理想気体を紹介する.
あとの節でも理想気体を例として計算することが多い.

内部エネルギーと比熱の節では内部エネルギーの熱力学的性質について論じる[1].

CarnotサイクルClausiusの不等式では熱力学第二法則の別表現を導出する.
これら自体重要なテーマであるがエントロピーの導入のため中継として位置付けている.

エントロピーエントロピー増大の法則では熱力学を特徴付ける物理量であるエントロピーについて議論する.

粒子数の熱平衡では粒子数の変化する過程について考察する.

部分系の熱平衡では複数の熱力学系における熱平衡を論じる[4].
またエントロピー最大の原理を導入する.

Helmholtzの自由エネルギーエンタルピーGibbsの自由エネルギーでは内部エネルギーからLegendre変換して得られる熱力学函数を紹介する[5].
ここでは単に形式的にLegendre変換するのではなく,熱力学の必要に応じて導入する.

熱力学関係式一般の熱力学関係式熱力学不等式では熱力学を記述する物理量の間に成立する様々な等式・不等式を紹介する[2,3].

Reference

標準的な熱力学の入門書としては
[1] 佐々真一,『熱力学入門』,(共立出版,2000).>>> Amazon
[2] 宮下精二,『基幹講座 物理学 熱力学』,(東京図書,2019).>>> Amazon

網羅的な演習書として
[3] 久保亮五,『大学演習 熱学・統計力学〔修訂版〕』,(裳華房,1998).>>> Amazon

入門には適さないがエントロピー最大の原理を基本原理とする熱力学の教科書として
[4] 清水明,『熱力学の基礎』,(東京大学出版,2007).>>> Amazon

熱力学を統計力学の視点からコンサイスにまとめたものとして
[5] L. D. Landau and E. M. Lifshitz, “Statistical Physics 3rd Edition”, (Butterworth-Heinemann, 1980).>>> Amazon