電磁場と粒子がある系の作用は次のように書かれる:
第1項は荷電粒子の作用,第3項が電磁場の作用,そして第2項が荷電粒子と電磁場の相互作用を表す.
第1項 は特殊相対論の節で導入した作用より,
である.
ここで は粒子を区別するラベルである.
また第3項は前節と同じ作用で,
では第2項の相互作用項とはどのようなものであろうか.
荷電粒子の運動方程式とMaxwell方程式両方を導くようにするには,
ととれば良いことがわかる.
積分の中の変数には注意しなければならない.
全空間で積分しているのは であり粒子の軌道 ではない.
場の変数 が荷電粒子の軌道上にきたときに相互作用して値をもつようにデルタ函数がはさまれているのである.
一方粒子の軌道はパラメータ で積分されているのはある瞬間での相互作用を軌道上の全ての点で足し上げるためである.
方程式を導くように相互作用を決めてしまうことは古典力学の範囲では恣意的にみえる.
しかしながら量子論ではこの相互作用の形はゲージ不変性とよばれる対称性を作用に課すことで自然に導かれる.
相互作用項はより簡潔な形に書き換えることができる.
荷電粒子の四元電流密度を
で定義する.
として時間 をとり を使って 積分を実行すれば,
は荷電粒子たちの電荷密度であり,空間成分 は 方向の電流密度に一致する.
こうして,
となる.
この形ではもはや粒子描像にこだわる必要はなくなり,連続的に電荷が分布している一般のときにもこの相互作用が適用できる.
こちらの形の方が場との相性がよいが荷電粒子の情報は見えにくい.
荷電粒子の運動に着目したいときはデルタ函数を使って場の引数の 積分を先に実行してしまう.
すると,
これは粒子の軌道に沿った積分である.
こうして電磁気学,すなわち荷電粒子と電磁場の共存する系の作用は,
電磁気学の作用
と書かれることになる.
電磁気学の作用が定まったので実際に変分原理を適用して運動方程式を導いていこう.
形式的な議論をするために作用をLagrangianをもちいて,
と表しておこう.
今,作用にあらわれる基本変数は粒子の座標 と場 とそれらの微分である.
これらを微小に変位させて とする.
変位の1次までとると作用の変分は,
ここで粒子を区別するラベル は和をとっているものとし,以下でも明らかにわかるときには省略する.
部分積分をおこない,あらわれてくる表面項は境界条件によっておとしてしまえば,
変位 と は任意にとってこれるから,それぞれの積分がその変位に対して恒等的に に等しくなるためには,
これらが荷電粒子と場に対するEuler–Lagrange方程式である.
ではこれらの方程式に具体的なLagrangianを代入しよう.
は のみの函数で
は の両方の函数であり,
と計算される.
註)第2項の変形については,
でありさらに部分積分を適用すれば 方向の無限遠でデルタ函数は となるので,
とできることを利用した.
したがって荷電粒子の運動方程式,
となる.ここで,
は四元運動量と粒子の座標における電磁場テンソルである.
また添字 は和をとっていないことに注意せよ.
パラメータ を時間 にとってこの方程式の空間成分をみてみると,
これは電磁場中で電気的力とLorentz力を受けている荷電粒子の相対論的な運動方程式に他ならない.
時間成分についてみると,
となる.
左辺は粒子のエネルギーの時間変化であり,左辺は単位時間に電場によりなされる仕事である.
つまりこれは荷電粒子についてのエネルギー保存則の式である.
次に電磁場の運動方程式をみていこう.
は場の微分 のみの函数で,
相互作用項 については のみの函数であり,
以上の計算の結果,
が得られる.
パラメータ を時間 にとって計算すると時間成分と空間成分はそれぞれ,
となって電荷が存在するときのGaussの法則とAmpère–Maxwellの法則になっている.
以上によって電磁場中の荷電粒子の系の作用に変分原理を適用することで運動方程式が正しく導かれることをみた.
この作用にNoetherの定理を適用することで各種の保存則を導くこともできる.
これは節を改めて議論するとこにしよう.