解析力学のための数学

この章では解析力学や以降の物理学で必要な数学について議論していく.
特にこの章で扱う数学は数学としても重要な基本事項を多く含んでいる.

集合写像では集合論を基礎とする数学で必要不可欠な用語の定義などを行う[1].

群の性質では物理学で使う群論について簡潔にまとめた[2, 3, 5].
群論は素粒子以外の量子化学や超伝導や絶縁体,固体物理学などの物性系,一般相対性理論でも重要な役割を果たす.

環と体では群を拡張して演算が2つ定義された集合について議論する[2].

ベクトル空間線型写像ではベクトルを抽象的な公理に集約して定義してその性質を議論する[4].
計量ベクトル空間ではベクトルの内積について公理的に述べる[4, 8].
ベクトル空間や計量ベクトル空間は力学以外にも特殊相対性理論,量子力学で基本となる.

テンソル空間では物理学のさまざまな分野登場するテンソルという概念について触れる[4, 6].
テンソルに関しては多くの物理の教科書でわかりにくい説明がなされるのでここでは丁寧に扱った.

Waldの抽象添字記法ではテンソルやベクトル,双対ベクトルたちの演算を簡潔に記述するための表記法を導入する[3, 6, 7].
また内積と双対ベクトルの対応関係なども議論する.

古典線型群では正則な正方行列がなす部分群の例を紹介する[9].

集合論に関しては
[1] 松坂和夫, 『集合・位相入門』, (岩波書店, 1968). >>> Amazon

群,環,体に関しては
[2] 雪江明彦, 『代数学1 群論入門』, (日本評論社, 2010). >>> Amazon

物理数学として群論に詳しいのは
[3] M. Nakahara, “Geometry, topology and physics”, (Taylor & Francis, 2003). >>> Amazon

ベクトル空間については
[4] 佐武一郎, 『線型代数学』, (裳華房, 1958). >>> Amazon

他に以下を参考にした
[5] 馬場正昭, 『基礎 量子化学 -量子論から分子をみる-』, (サイエンス社, 2004). >>> Amazon
[6] R. M. Wald, “General Relativity”, (The University of Chicago Press, 1984). >>> Amazon
[7] 白水徹也, 『アインシュタイン方程式 〜一般相対性理論のよりよい理解のために〜』, (サイエンス社, 2012). >>> Amazon
[8] B. シュッツ, 『相対論入門 I 特殊相対論』, (丸善, 2010). >>> Amazon
[9] 小林俊行, 大島利雄, 『リー群と表現論』, (岩波書店, 2005). >>> Amazon