散乱問題; 剛体球ポテンシャル

Prerequisite

剛体球ポテンシャルによる散乱

剛体球ポテンシャルによる散乱問題を考察しよう.
剛体球ポテンシャルは

で与えられる.
たとえば入射粒子より十分重い半径 a  の剛体球(硬く変形しない球)が原点においてあり,粒子の衝突による剛体球の運動は無視するような状況を考える.

まず粒子の軌道を求めよう.
ポテンシャルの到達範囲 a  の外では粒子は等速直線運動する.
初期条件を無限遠から x  軸方向に速度 v_{\infty}  で入射させるとする.
衝突パラメータが b>a  の場合は粒子は散乱せず素通りする.

b\leq a  の場合は粒子はポテンシャルと相互作用して軌道が変化する.
粒子と剛体球は (-\sqrt{a^2-b^2},\,b)  の点で衝突する.
この点での球面の接平面を設けると中心力場の性質から粒子は接平面と垂直な方向に力を受け,平行な方向には力を受けない.
ポテンシャルで書けているので衝突の間エネルギーが保存し反発係数e=1
したがって接平面と粒子の入射速度のなす角を \delta  とすると,終端速度と接平面がなす角も \delta  である.

簡単な幾何学から散乱角が \theta=2\delta  であり,

であることがわかる.
これらから \delta  を消去して b  \theta  で表すと,

となって所期の衝突パラメータと散乱角の間の関係式が得られた.

次に微分散乱断面積を求める.
衝突パラメータは \theta  にしか依存していないので \mathrm{d}/\mathrm{d}\Omega=(1/2\pi\sin\theta)\mathrm{d}/\mathrm{d}\theta  となって,

代入して微分を計算すると,

であるが三角函数の公式 \sin\theta=2\sin(\theta/2)\cos(\theta/2)  であることを用いれば,

となって,散乱角 \theta  や初速 v_{\infty}  には全く依存せず,ポテンシャルの半径にしか依らない.
全散乱断面積は,

となる.
\pi a^2  とは半径 a  の円の面積である.
今の場合この量は粒子がポテンシャルと衝突できる b  の範囲に等しい.

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