Prerequisite
この章ではもう一つの力学の形式である正準形式 (canonical formalism) あるいはHamilton形式と呼ばれる理論を見ていく.
正準形式はLagrange形式より見た目も数学的にも美しくまとめられる.
統計力学や量子力学は正準形式を出発点にする.
まずLagrange形式から出発して正準形式の基礎方程式を導いてみよう.
一般にLagrangianは位置,速度と時間の函数であった.
Lagrangianの全微分をとってみると,
![](https://storytellphys.wordpress.com/wp-content/uploads/2020/12/001rmd_l__sum_i_fr.png?w=456)
がEuler–Lagrange方程式を満たすとすると,
![](https://storytellphys.wordpress.com/wp-content/uploads/2020/12/002rmd_l__sum_i_fr.png?w=488)
となる.(保存するかどうかは別として)一般化運動量の定義は,
![](https://storytellphys.wordpress.com/wp-content/uploads/2020/12/003p_i__fracdel_l_.png?w=112)
であったから,
![](https://storytellphys.wordpress.com/wp-content/uploads/2020/12/004rmd_l__sum_i_do.png?w=416)
と書き換えられる.ただし が
の函数であることに注意せよ.
運動量の定義式は について解けると仮定して,
![](https://storytellphys.wordpress.com/wp-content/uploads/2020/12/005dot_q_i__dot_q_.png?w=168)
が得られたとしよう.そして次のような函数を定義しよう:
Hamiltonian
![](https://storytellphys.wordpress.com/wp-content/uploads/2020/12/006hpq__sum_ip_.png?w=474)
右下は, を代入して
の定義式に
が陽に現れないようにした,ということを示す.
今度は の全微分をとってみると,
![](https://storytellphys.wordpress.com/wp-content/uploads/2020/12/007rmd_h__sum_ip_i.png?w=388)
の式を代入すれば結局,
![](https://storytellphys.wordpress.com/wp-content/uploads/2020/12/008rmd_h__sum_i_do.png?w=422)
これより という量は位置とそれに対応する運動量の函数
になっている.
を系のHamiltonianという.
またここで行った独立変数の取り替えを一般にはLegendre変換という.Lagrangianの独立変数は位置と速度であったものがLegendre変換によってHamiltonianでは位置と運動量に置き換わっているのである.Legendre変換については次の節で詳細を述べる.
Hamiltonianの全微分は,
![](https://storytellphys.wordpress.com/wp-content/uploads/2020/12/009rmd_h__sum_i_fr.png?w=480)
時間を固定して二式を比較してみれば次の 個の方程式が得られる:
正準方程式
![](https://storytellphys.wordpress.com/wp-content/uploads/2020/12/010dot_q_i__fracd.png?w=136)
これらを正準方程式 (canonical equations) あるいはHamilton方程式という.
この方程式は位置と運動量について非常に対称性が良い.そういう意味で正準という.また の組を正準変数といい正準形式での基本変数として扱う.
一般のポテンシャル の系のLagrangian
![](https://storytellphys.wordpress.com/wp-content/uploads/2020/12/011l__frac12mv5e2_-.png?w=224)
から正準方程式を導いてみよう.運動量は なので
![](https://storytellphys.wordpress.com/wp-content/uploads/2020/12/012h__frac_1_2m_p5e.png?w=230)
これから導かれるHamilton方程式は,
![](https://storytellphys.wordpress.com/wp-content/uploads/2020/12/013dot_x__frac_p_m.png?w=308)
第1の式から であり,これを第2の式に代入すれば,
![](https://storytellphys.wordpress.com/wp-content/uploads/2020/12/014m_ddot_x__-_fra.png?w=184)
となってNewton方程式を再び得る.
以上のことは次元を増やしても同様に成り立つ.たとえば3次元の 個の質点のLagrangianに対応したHamiltonianは,まず直交座標では
![](https://storytellphys.wordpress.com/wp-content/uploads/2020/12/015h_bs_r__bs_p_.png?w=540)
ただし .
円筒座標では,
![](https://storytellphys.wordpress.com/wp-content/uploads/2020/12/016h_bs_r__bs_p_.png?w=556)
ただし .
最後に球面極座標では,
![](https://storytellphys.wordpress.com/wp-content/uploads/2020/12/017h_bs_r__bs_p_.png?w=634)
ただし .
Problem
1次元の調和振動子の系のLagrangian,
![](https://storytellphys.wordpress.com/wp-content/uploads/2020/12/018l_frac_1_2_mv5e2.png?w=228)
からHamiltonianを求め,正準方程式を導出せよ.
運動量は .定義より,
![](https://storytellphys.wordpress.com/wp-content/uploads/2020/12/019h_frac_1_2m_p5e2.png?w=234)
となる.よって正準方程式は,
![](https://storytellphys.wordpress.com/wp-content/uploads/2020/12/020dot_x_t_frac_.png?w=320)