Fourier展開の性質

Prerequisite

区間 [-\pi,\,\pi]  における自乗可積分かつ連続な函数 f  のFourier展開は

であった.
ここで各係数は

によって与えられる( a_n  n=0  も含む).
前節の証明では函数 f  は区間内で常に連続であることを要求したが,実は f  が有限個の不連続点を持っていてもFourier展開は可能である.
そのような高々有限個の不連続点をもちそれ以外で連続な函数は区分的に連続 (piecewise-continuous) とよばれる.

もし函数 f  が区間内の点 x=x_0  において不連続とし,左極限と右極限には有限の飛び

が存在するとする.
不連続点以外の任意の点 x  ではFourier級数は f(x)  に収束する.
しかし不連続点においてFourier級数は左右の極限値の平均値

に収束する.

Fourier展開の完全性の証明において函数 f  の連続性を用いたのはCesàro平均との差

の評価で積分区間を分割する部分であった.
このうち十分小さな区間では |f(\xi + x) - f(x)|<\epsilon  と評価できることに連続性を用いた.
いま不連続点においては f(x)  の代わりに \bar{f}(x_0)=[f(x_0+0)+f(x_0-0)]/2  に取り替えて

を評価しよう.
左極限の定義より任意の \epsilon>0  に対してある \delta>0  が存在して,範囲 0<\xi<\delta  において |f(\xi+x_0)-f(x_0-0)|<\epsilon  を満たすことができる.
右極限も同様に,範囲 -\delta<\xi<0  において |f(\xi+x_0)-f(x_0+0)|<\epsilon  を満たすようにできる.
三角不等式を用いて

と分解する.
左極限に関する第1項については積分区間を

と分割すれば,連続な場合と全く同じ評価が可能で N\to\infty  0  へ収束することが示せる.
第2項の右極限についても同様.
したがって不連続点においては \sigma_N(x_0)\to\bar{f}(x_0)  であり,これはとりもなおさずFourier級数が \bar{f}(x_0)  に収束することを意味する.
もちろん連続な点 x_0  においては \bar{f}(x_0)=f(x_0)  なのでこの証明は連続な場合も含んでいる.

Fourier展開の区間は別のものに取り替えることが可能である.
区間 [-L,\,L]  で定義された函数 f,\,g  に対して内積の定義を

と変更する.
y=\pi x/L  と変数変換すればこれまでの内積の定義に戻る.
そのため直交函数系としては

に選べば良い.
このときFourier展開は

に代わる.
各Fourier係数は

で与えられる.

三角函数と指数函数はEulerの公式によって

と関係付いている.
このことを応用すればFourier級数を指数函数でも表すことができる.
Eulerの公式を適用するには函数の集合を複素数値函数 f: [-\pi,\,\pi]\to\mathbb{C}  に拡張する必要がある.
複素数値函数 f,\,g  の内積を

で定義する.
g^*  g  の複素共役.
複素数値函数は2つの実数値函数を用いて f=g+ih  と分解できる.
g,\,h  はそれぞれFourier展開可能で

とする.
各々のFourier係数 a_n,\,b_n,\,a_n',\,b_n'  は実数.
これによって f  のFourier展開は

と書くことができる.
ただし A_n=a_n+ia_n',\,B_n=b_n+ib_n'  とおいた.
さらにEulerの公式を適用して指数函数に書き換えると

あるいは c_{-n}:=d_n,\,c_0=A_0/2  とおけば

Fourier展開

とまとめられる.
この形もFourier展開と呼ばれる.
Fourier係数 c_n\in \mathbb{C}

によって与えられる.
特に f  が実数値函数のときは c_n^*=c_{-n}  である.
指数函数の組み \{1,\,e^{ix},\,e^{-ix},\cdots\}  は直交函数系であり

を満たすことは容易にわかる.

最後に多変数函数のFourier展開について簡単に触れておこう.
二変数函数 f(x,y)  の二次元正方領域 [-\pi,\pi]\times[-\pi,\pi]  上のFourier展開は

となる.
この場合,函数の内積は

で定義され,Fourier係数は

で与えられる.

コメントを残す