Fourier展開の計算

Prerequisite

この節ではFourier展開の具体的な計算を実行していこう.
区間 [-\pi,\,\pi]  における自乗可積分かつ区分的に連続な函数 f  のFourier展開は

ここで各係数は

によって与えられる( a_n  n=0  も含む).

[符号函数]
f(x)=\mathrm{sgn}\,x  のFourier展開.グラフはFourier級数の部分和でそれぞれ N=5, 10, 30

次で定義される符号函数を考える:

奇函数なので明らかに対称な積分区間 [-\pi, \pi]  上では任意の n  a_n=0
一方で b_n  は積分区間を連続な区間に分割することで

と計算される.
よって

とFourier展開される.
2つ目の等式では n  が偶数のときの項が落ちることから n=2k-1  の項を残した.

グラフを見ると不連続点 x=0  の近傍においてFourier級数は他よりも大きく振動している.
この振動は部分和の N  を大きくしても,その近傍のサイズは小さくなるが振幅は一定幅のところで残り続ける.
一般にFourier級数の不連続点まわりのこの飛びが残り続けることはGibbs現象として知られる.
Gibbs現象はFourier級数が各点収束とは限らないことに由来し,その振動の大きさを定量化可能であるがここでは詳細に立ち入らないことにする.

[一次函数]
f(x)=x  のFourier展開.グラフはFourier級数の部分和でそれぞれ N=5, 10, 30

簡単な次の函数を考える:

奇函数なので明らかに対称な積分区間 [-\pi, \pi]  上では任意の n  a_n=0
一方で b_n  は部分積分により

と計算される.
よって

とFourier展開される.
この展開式の x=\pi/2  において

が成り立っている.
2つ目の等式では n  が偶数のときの項が落ちることから n=2k-1  の項を残した.
この等式からLeibnizの公式

が導かれる.

[絶対値函数]
f(x)=|x|  のFourier展開.グラフはFourier級数の部分和でそれぞれ N=5, 10, 30

次で定義される絶対値函数を考える:

偶函数なので明らかに対称な積分区間 [-\pi, \pi]  上では任意の n  b_n=0
一方で a_n  は偶函数の積分だから n\geq1  では

と計算される.
n=0  のときは

よって

とFourier展開される.
2行目へは偶数のときの項が落ちることから n=2k-1  の項を残した.

[正規化線型函数]
f(x)=(x+|x|)/2  のFourier展開.グラフはFourier級数の部分和でそれぞれ N=5, 10, 30

次で定義される正規化線型函数を考える:

a_n  について n\geq1  では

と計算される.
n=0  のときは

一方で b_n

と計算される.
よって

とFourier展開される.

[二次函数]
f(x)=x^2  のFourier展開.グラフはFourier級数の部分和でそれぞれ N=3, 5, 7

次の函数を考える:

偶函数なので明らかに対称な積分区間 [-\pi, \pi]  上では任意の n  b_n=0
一方で a_n  n\geq1  のとき部分積分により

と計算される.
n=0  のときは

よって

とFourier展開される.
この展開式の x=\pi  において

が成り立っている.
この式を整理すればいわゆるバーゼル問題の解

が導かれる.

[指数函数]
f(x)=e^x  のFourier展開.グラフはFourier級数の部分和でそれぞれ N=5, 10, 30

次で定義される指数函数を考える:

a_n  について n\geq1  では部分積分により

と計算される.
a_n  について解けば

n=0  のときは

一方で b_n  は同様に部分積分によって

と計算されるので

以上から

とFourier展開される.

[三角函数]
f(x)=\cos(x/\sqrt{2})  のFourier展開.グラフはFourier級数の部分和でそれぞれ N=3, 5, 7

次で定義される三角函数を考える:

偶函数なので明らかに対称な積分区間 [-\pi, \pi]  上では任意の n  b_n=0
a_n  について n\geq0  では和積の公式により

と計算される(この計算は n=0  も含まれる).
以上から

とFourier展開される.
この展開式の x=\pi  において

となったものを \alpha  の函数と見る.
右辺の無限級数は任意の \alpha\in(0,1)  で一様収束であり項別積分が可能である.
これを認めれば上式の両辺を整理して

として積分を各項で実行できる.
ただし 00  で止めておいて変数変換 \beta=\sin\pi\alpha  によって

となる.
後ろの発散する項は右辺からくる発散とキャンセルするので残しておく.
右辺では

先に発散の問題を処理しておこう.
右辺第2項と左辺からくる発散項は

となるのでこれらの項は最終的な表式に現れない.
あとは右辺にある項別積分を実行していく:

以上から

あるいは対数を外せば正弦函数の無限乗積表示

が導かれる.
\sin\pi x  x=n\in\mathbb{Z}  に零点をもつのでこの関係式は正弦函数の「因数分解」と捉えることができる.

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